涙のこぼれ音楽遍歴

中学三年、何がきっかけでかは忘れてしまったが、友達にカラオケに誘われた。

多分人数が少なかったか、いつも同じ面子で飽き飽きしてたか。なぜか野球部のやつらの集まりに誘われた。

俺は嬉しかった。その頃友達と言えば塾が同じなやつだけで、学校では寝たフリをして過ごしていたから。

俺と仲良かったやつはクラスが変わればすぐに消えた。

みんなでチャリに乗りながらカラオケに向かう道中、俺は必死に騒いだフリをしてた。カラオケ?俺はすごい音楽を聴いてるんだ、俺が歌える曲があるってか?何て思ってたけど打ち消し、思いっきり笑った。これが最後のチャンスだと思ったから。

カラオケ部屋に入り俺はまず脱いだ。ズボンが部屋の外に投げられた。それなりに受けた。とにかく踊りまくったりした。それなりに受けた。

めちゃくちゃ不味いジュースを配合して飲んだり。

そんな中、友達が歌い出した。AKB48だった。

「こういうのも、いいんだな。」って思った、素直に。

俺は多分歌わなかったと思う。みんなが歌ってるあとに合わせて叫んだりしたと思う。歌える曲が、ひとつもなかったから。

メンバーの中に一人、Kが居た。一年の頃親友だったやつだ。

1年前ぐらいにメールが来た。

「林、俺さ、いじめられててさ、そんなときに音楽聞いて思ったんだよ。ステージの人はものすごく苦しんでるのにさ、笑ってる。俺もそうなれたらいいなってさ。」

そいつは湘南乃風EXILEを歌ってた。俺は素直によかったと思った。

俺は帰り道一人、久々に友達と遊んだなぁ、って思った。

その週の休日から、俺は流行ってる音楽を片っ端から借りた。YUI西野カナはまだなんとか辛うじて聞けたから借りた。

家に帰って無理して聞いた。また誘われたときに俺も歌えればな、と思ったから。

そこから、一度だけその時のメンバーの2人とカラオケに行ったけど、全然盛り上がらないし、隣の部屋のヤンキーに乗り込まれて楽しめなかった。全員で2,3曲歌って帰ることになった。

ある日、俺は来たるカラオケDAYに備えてレンタルCDショップに行った。

Kや、みんなが居た。俺は無視されていた。

「お、久しぶりやんけ。」

「あー、林。俺ら、急ぐから。」

「そうか。」

俺はその日、ジミヘンを借りた。

そのまま、もうカラオケにはだれにも誘われないまま卒業した。