ニュージーランド帰国事件 Part.1

コンプレックスに羽尾い固めにされてる。

だから苦しいだけで生活はそこそこ安定してきてる。

 

高校の頃、どうしようもなく憂鬱で何か変わるきっかけが欲しかった。

毎日メンヘラ女と話していて、「何やっとんじゃい?」って気分だったから。

俺は学校で三ヶ月のニュージーランド留学に行ってみることにした。親父を説得してお金を出してもらい、携帯は置いていくことにして、とにかく無理矢理にでも変わらなきゃ、ここから抜け出さなきゃって感じだった。

出国前日の夜、お母さんが俺に言った。

「携帯、何かあったときのために持っていっといたら?」

漫画とか暇潰しを鞄に詰めて俺はニュージーランドに旅立つことになった。

空港で同じクラスの女の子が一人、目が死んでる気がした。俺は無視した。

入国し、新生活が始まる予感にワクワクした。ホストファミリー。良さそうなおじさんとおばさん。

スーパーに寄って飲み物を買うことになった。

「ファンタでいいか?」

コーラよりましだったからファンタでいいや、と思った。

家について、ホストに自分のデモテープを渡し、部屋に行った。一人になりたかった。

一緒に飯を食うことになった。くそみたいな味だった。

「ファンタはいいか?」

ファンタを飲み干して、俺は適当な理由をつけて飯を残した。とかく不味かった。

「帰りたい。」

音楽を聴き、小説を、漫画を読んで気を反らした。

次の日は始めての学校だった。普段全く話しかけてこないクラスの女子とも話せた。

飯を食う時間になって弁当箱を開けた。

バナナ、リンゴまではまだ理解できた。

キュウイ。皮は剥かれてなくてそのまんまだ。

俺は果物を無視してサンドイッチにテンションをあげて食うことにした。なんの味もしない、ゴマのごみみたいな味がした。

昼飯時が一番空腹だった。

家に帰り、弁当をありのままの姿で返すとしかられた。ありのまますぎず、もう少し味をつけてくれ、キュウイの皮は剥いていてくれ。

晩飯はビーフストロガノフと名付けられた胃液だった。

俺は一口食べて自分の部屋へ。

「ファンタはいらないのか?」

いらねーよ!!

学校終わり、俺は町をぶらつくようになった。町ではWi-Fiが通ってる。

携帯は実家においてくるべきだった。メンヘラに連絡した、電話した。マクドを食ったり日本食料理屋のカツ丼を食ったりカレーを食ったりし始めた。

「ファンタを飲まなくていいのか?」

「ファンタはいらない。」

「なら、ココアはどうだ?」

ココアは、この家で胃を通過した唯一のものだ。そいつの正体は帰国してしばらくしてから始める筋トレの時に理解した。プロテイン。その家ではプロテインが、一番うまかった。イチゴジャムすら不味かった。

週末、ホストに黙って車に乗せられた。殺されるのか?と思ったら、近所にいるホストの親戚の家についた。

そこには日本人がいた。

「ヘイ、ギターがあるよ。弾く?」

ホストを無視して日本人とはなした。飯を食えないことを説明してもらい、次の日から自炊になった。楽勝だ。

みんなで鳥の丸焼きを食った。丸焼きだけはなんとか食えた。

次の日は買い物。カレーを買った。こいつさえ作れれば!ラーメンとかをぶちこんで帰宅する途中にバーガーキングへ。

「ほら、ファンタだ。」

「、、。」

「俺は痩せたいんだ、だから毎日ダイエットコークを2L飲んでる。」

ジョークを言ってる顔つきじゃなかった。

家について米を炊き、カレーの支度を始めた。ホストは俺にこの家のWi-Fiのパスワードを書いた紙を探し始めた。

カレーは最高だった。玉ねぎが腐りかけて溶けてたのは置いといて。さて、目玉焼きを乗せよう。

卵を焼くと、吐き気がした。腐卵臭を無視して俺はカレーを食った。ファンタと一緒に。卵を乗せなければ完璧だった。

「携帯を貸してみろ。」

実に30分、Wi-Fiのパスワードを入れ続けてる。指が太くて他のキーに当たるのだ。俺に打たせて、というと「この家のパスワードなんだから」という意味のわからない返答。

やっと登録し終わり、俺はメンヘラ女と電話し続ける毎日がまた始まった。

便所に行くと下痢だった。救いようがない家に当たってしまった。

不味い飯ならまだしも、下痢だった。ファンタかプロテインしかないのか?

学校にいくのに弁当はもう持っていってなかった。昼はマクドを食っていたがその日は女の子達を日本食料理屋に連れていった。全員カツ丼を頼んだ。

ギャル、露出したへそを眺めながら少しニュージーランドに来てよかったと思った。みんなで会話しながら飯を食う。男は俺だけだ。天国だ。

そのあとは町を案内した。

商店街、みんな服を見に行くと入っていった店の前で強烈なものを見た。

金髪のドレッドに、わけのわからない布を羽織った男と、高いスーツを着た男が太鼓を持ちながら、やけに煙の多いタバコを二人で一本を回して吸っていた。

太鼓を叩き始める男。俺は真ん前に行き、踊って金を払った。女の子達はもうどこかに消えていた。

「お前も叩くか?」

俺はその太鼓に跨がり、一心不乱に叩いた。おばさんが俺の音を聴いて踊ってくれた。

「俺たちと来る?」

「Ah...」

「時間がないんだ、またな。」

Yesって言えば多分、俺は留学先で旅行できただろう。精神の。

女の子達は姿を消していた。探してもどこにもいなかった。諦めて美術館に行き、ホットドックを食い、海を眺めた。

 

Part.2は後日。