ニュージーランド帰国事件pt.2
日光が俺を攻撃してくる。
「誰よりも速くなりたい」
阿部薫の他の詩はどこに隠されている?
美術館、本屋、海辺、路上のミュージシャンだけが慰めだった。家に帰ればホストに心配され、限界だった。話す気にもなれない。
「ファンタは?ココアは?」
「No thank you」
俺はひたすら女の子に電話し続けた。学校に行き、眠り、授業が終わると日本食料理で食う。中国人の作る日本食。
カツカレーを頼むと、カツにカレーソースがかかったものだった。出てくるまで50分かかった。豚を殺すのに難儀したんだろう、そのわりに味は最低だった。
スケボーに乗るガキ、スプレーで彩られた、無名で路上の美術館も見飽きた。なにもかもどうでもよくなった。これじゃ実家にいるより最低だ。
再来週から通う高校は男子校、女が居ないなんてな。最低だ。
家に帰ろう。
俺たちの留学をサポートしてくれるところに行った。
デブで眼鏡の同級生がどうでもいいところでたらたら抜かしてる、その横であの空港で死んだ目付きをしてた女が死体みたいなツラをさらしていた。
「どうしたん?」
泣いていた。
俺は童貞で、抱き締めるなんて出来ないし、取り合えず頭を撫でてみた。それからどうしたらいいかわからずに顎を顔の上に乗せた。
ものすごくいい匂いがした。
ずっと元カレの愚痴を聞き、ホストの愚痴を聴いてあげた。泣き止んだ。
俺も少しは甘えたくなって聞いてみた。
「あとで抱きついてもいい?」
「いいよ、。」
「やっぱりいいや。」
死んでる顔の女は、学内で一番かわいかった。俺は惚れた。
二人で帰国の話をつけて、カウンセラー的な人と3人で飯を食べ、それから連絡先を交換し、バス停で握手をして別れた。
帰ってまず手の匂いを嗅いでからしこった。
その3日後、そいつは帰国した。帰国後俺が電話をすると、テレビを見ながらポテチを食ってた。俺がいろんなことを相談すると、ほとんど、へぇ、そうなんや。」とかそんな返事だけだった。帰国前に電話したときは、まだ切りたくないな、とか合ったってのに。
「何?もう切ってもいいかな。」
そいつと5分の電話を終えた2日後、俺は帰国した。
留学で学べたのは、メンヘラ女の面倒くささだけで、俺はそこからさらにメンヘラ女にハマるだけハマって行った。今もメンヘラ女にしかモテない。