愛猫ロンの哲学
俺は眠れず、なにも書けず、イライラしてロートレアモンの詩をネットで読んでいた。
喉が乾いたから、ちょうど起きてきた彼女と自販機にお茶を買いにいこうとおもった。
ロンは飼っている猫だ。
彼女がトイレに行くだけでさみしがり、階段のところまで見に来ている。彼女が戻ると喜ぶ。
やたらと泣きわめく。餌をやったら黙る。
自販機から帰ってくるとロンは俺たちを階段のヘリで待っていた。
寂しそうな顔をしていたので撫でると部屋の隅に行った。
部屋の隅に行ったロンに「こっちおいで。」と言う俺に彼女は言った。
「猫ってな、呼ばれてもこやんやろ、どうでもよくなったときに来るやろ、そういや呼ばれてたな、と思ってくるねんて。」
俺は思った。彼女に話し出した。
「猫は二元論の世界で生きてると思うねん。」
「二元論ってなに?」
「快、不快、しかないこと。さみしいからかまってほしい、だから体を擦り寄せてくる。さみしくないから黙っててほしい。だから今、俺らのとこに来てないねん。ようするに真ん中がないと思うねんな。嫌、か、嫌じゃない、か。」
ロンは立ち上がって、部屋の隅と俺がいる場所の真ん中に座った。
「なんや、二元論に反対するんか?」
「みゃあ。」
「ロン、言葉わかってるんちゃうか。おい、ロン、二元論に反対するんか?」
「みゃあ。」
「言葉わかってるんか?」
「…」
「二元論には反対やねんな?」
「みゃあ。」
彼女と二人で笑った。