スラッジ禅問答

ダダは何も意味しない。

ダダ論と現在の日本のノイズシーンについて

ダダイズム、とはトリスタンツァラが戦争のPTSDから始めた芸術だ。

「ダダは何も意味しない。」

ダダ宣言 (1970年)

ダダ宣言 (1970年)

 

 

つまり、ダダイストたちは言語や現実、自己、この世の何もかも全てを破壊しようと試みた。

ダダ宣言はどれも似通っている。

「この苦しみから抜け出すために全てを無にしよう。そのために否定と破壊を繰り返そう。」

基本的にはこれなのだ。

戦争の追体験を芸術で成し遂げたのだ。

仏教やパンクと同じ側面がある。彼らには未来がない。実際にジャックリゴーは頭を撃ち抜いて自殺している。ダダは基本的に怒り以外の感情がない虚無主義者の集団なのだ。

 

自殺総代理店

自殺総代理店

 

 

それを打破したのがラウールハウスマン。写真を切り刻み張り付け、政治批判を行った。
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完全に無意味であった、ツァラの無作為に切った新聞紙片を並べ、詩とする、或いは何人もが別々の詩を読むと言うダダの技法から意味が存在し出した瞬間だと思う。

ムッシュー・アンチピリンの宣言―ダダ宣言集 (光文社古典新訳文庫)

ムッシュー・アンチピリンの宣言―ダダ宣言集 (光文社古典新訳文庫)

 

 

マルセルデュシャンは芸術とは何か?を観客に考えさせた。今までの芸術と言う概念をぶち壊したのだ。

そして、虚無が実存へと向かう瞬間、アンドレブルトンによるシュルレアリスムの誕生だ。

「ダダは何も意味しない。」虚無主義で、そのままダダイスト達は自殺を選んだ。

実存主義者は、必ず前段階として虚無主義を体験する。

「人生とは無意味だ。」

そして実存

「なら存在理由をでっち上げよう。」

シュルレアリスムは、ダダイストたちが変換した芸術である。

実存主義へと転嫁し、無意味に意味をつけたのだ。

ブルトンは「無意識に筆記する自動筆記」を始めた。

シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)

シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)

 

 

ダリの「夢を絵にする」行動。

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まるで存在しない世界が存在しているかに思えるマグリットの絵などが分かりやすいだろう。
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信仰に近づいたのだ。

実存主義キルケゴールは「死に至る病は絶望だ。神に希望を持つしか解決手段はない。」と話した。それと同じで、存在しないものを存在させようとする、超現実を作り上げ、虚無主義から脱出を図ったのだ。

 

死に至る病 (岩波文庫)

死に至る病 (岩波文庫)

 

 

「ガリベリビムバ」と言う無意味な詩を朗読したフーゴバルはまるで禅僧の唱えるマントラの様だ。
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ハンスアルプは「私は間違った計算が好きだ。なぜなら、その方がより適切な結果が得られるから」と言っている。

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モナリザの絵に髭を描いただけの作品、トイレの便器を出展したマルセルデュシャンは、パンクのように正直に分かりやすく、疑問を提示している。

 

デュシャン NBS-J (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)

デュシャン NBS-J (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)

 

 

部屋をぐちゃぐちゃにしただけのメルツバウと言う作品を作ったクルトシュビッターズは、ツァラらの仲間にいれてもらえず一人で行動した。この点は個人的に好きなエピソードなので書かせてもらった。
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さて、ここからは日本のダダイズムについて説明したい。

ここでいう日本のダダイズムとは、"不安感"で共通しているだけで、無意味な行動を繰り返しているわけではない点が多いが、面白いので色々と取り上げていこうと思う。厳密に言うならダダとはかけ離れているものも多いのでそこは理解してもらいたい。ただ、ダダとは不安のある場所に生まれるのだ。

 

日本で初めてのダダイスト高橋新吉だ。彼は

倦怠。

と言う詩を書いている。

彼はニーチェのように発狂し、その後禅思想へと流れた。

陰鬱で、ツァラに影響を受けた詩を何点も残している。

ダダイストの睡眠 (境界の文学)

ダダイストの睡眠 (境界の文学)

 
タ゛タ゛イスト新吉の詩 (愛蔵版詩集シリーズ)

タ゛タ゛イスト新吉の詩 (愛蔵版詩集シリーズ)

 

 

第一次世界対戦後のMAVOは村山知義が始めた運動で、ベルリンダダに影響を受けたコラージュが多い。

 

 

 

安保、万博、70年代、ヒッピー、フーテン、学生闘争、そんな最低な時代に篠原有司男らによってネオダダイズムオルガナイザーズが結成される。

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読売アンパンという素人の展示展は彼らによってめちゃくちゃになっていく。

 

反芸術アンパン (ちくま文庫)

反芸術アンパン (ちくま文庫)

 

 

洗濯ハサミを客の服につけたり、ただただデカいオブジェをつくったり。

篠原は壁をボクシンググローブで殴った。パフォーマンスし、目立った。日本で初めてモヒカンにし、マスコミ受けを狙った。

吉村益信と共に歯を磨き続け血を流したりした。

風倉匠は、舞台上で背もたれのない椅子から転倒し続けるパフォーマンスを繰り返し、骨折している。

VANは日本に公開されていない映画を公開すると言い、客を呼び込み、ライターやマッチを観客から没収し、密室に閉じ込めたりした。

具体芸術協会は少し他の団体と比べ、反芸術的ではなかった。

海外でも有名な具体は、主にデカイ紙を突き抜ける、泥の中で這いずり回る等した。

名古屋のゼロ次元は着衣で借りきった銭湯に入ったり、全裸で町を歩いた。ゼロ次元はすべて、儀式性を意識している。

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ゼロ次元 -加藤好弘と60年代

ゼロ次元 -加藤好弘と60年代

 

 

集団蜘蛛は路上でセックスをした。ただ、それだけだ。

ダダカンこと糸井貫二は「殺すな」と書いた紙を張り、街を歩いた。単独で行動していた彼は、子供を授かったあと美しい詩を残している。

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ハイレッドセンターはネオダダイズムオルガナイザーズに居た、赤瀬川原平によって結成され、ひたすらにアスファルトを雑巾で磨き続けたりした。

東京ミキサー計画:ハイレッド・センター直接行動の記録 (ちくま文庫)

東京ミキサー計画:ハイレッド・センター直接行動の記録 (ちくま文庫)

 

 

現在、日本にも世界にもダダイストは居ない。

敢えて勝手に言わせてもらうが、不安、を音楽と言う行動で、ライヴハウスと言う場所で、総合芸術的な活動していた大阪のDANCE MISSING TILT(現在はDMTと名前を変え続行。)と言うバンドはダダ的であると言える。

本人らがダダを意識しているとも、不安を意識しているとも、思っていないが紹介したいので書かせていただく。

大抵どのサイケデリックミュージックも、グッドトリップの影響を受け活動しているが、彼女らは真逆のことを行っている。バッドトリップの表現である。

Mixiの紹介文、コンセプトによると、「極上のバッドトリップをお届けします。」と書いてある。

始めてみたときはあまりの衝撃に言葉を失った。

ただ、4人が一心不乱に太鼓をリズムすら無視し、叩き続けるのだ。

女性二人が踊っている姿はまるで暗黒舞踏のを思わせた。

暗黒舞踏土方巽による前衛舞踏である。

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地下鉄の駅で叫ぶ男性の映像などがYouTubeにアップされている。

"椅子喰い” dance missing tilt (Official video) - YouTube

東京の異形人と言うバンドは、ダンサーとギターの二人組だ。

異形人ライブ20120922 - YouTube

ギターはにらと言う方で、ゴイゾンなど非常に様々なバンドで活動している。

ギターによるノイズに合わせ、ダンサーがひたすら、暗黒舞踏のように、躍る。厳密に言うと躍りと言うより、祈りや破壊を覚えるその動きには非常に感動した。

そのライヴは現代芸術家の母を持つ、Kazehito Sekiの企画、Extreme Anal Tapで体験した。Extreme Anal Tapは濁朗など現代のノイズシーンを盛り上げている方たちで、10分間前のバンドと共演、10分のソロ、残りの10分が後のバンドとの共演、と言う非常に異質なイベントだった。 

Kazehito Sekiは元おまわりさんと言うバンドでヴォーカルをしていて、現在はソロで声によるノイズ、インプロヴィゼーションを展開している方だ。ヨーロッパなど世界を股にかけて活動しており、ヴォイストレーニングの講師もなさっている。

kazehito seki - YouTube

Terror Hitと言うユニットをしており、Extreme Anal TapでのギターはHUHなどのバンドをしているKyosuke Teradaとともにパフォーマンスを行っていた。

あまりにも衝撃的なライヴで、言葉で表すことができない。

 

とにかく、今の日本のノイズシーンは非常に停滞しているように思える筆者だが、中にはとんでもなく革新的なことを行っている方も居るのだ。

(ダダからかけ離れてはいるが、彼らは停滞した音楽シーンを塗り替えること、つまり破壊と言う点においてダダと言えるのでここに記した。)